小野雄大として初のお芝居に出演させていただきます。
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演劇グループ キコ/qui-co
第10回公演「鉄とリボン」
▼日時(計3公演)
2018年5月2日(水) 19:00
2018年5月3日(木) 12:00/17:00
▼劇場
座・高円寺2
以下、キコ/qui-co HPより、鉄とリボンにおけるスケッチ(あらすじに代えて)
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物語は渋谷区のライオンズマンションの一室から始まる。
日曜日。訪れた春の静寂の匂いを嗅ごうとサッシ窓を空ける。築30年のマンション。錆びたレールは金切音を立て重くひっかかかる。無意識の脳裏にストレスが蓄積する。窓を開けるのはそこでやめた。中途半端に開いた空間から暖かな排気ガスの匂いが舞い込む。二日酔いの頭に痛みが走る。
彼女の名は、ナギ。記憶がない。
彼女のくちびるは乾いている。上のくちびると下のくちびるが幾度か接触しては音を奏でる。
それは歌だった。
男がナギの声を聞いたのはそれが初めてで、その歌について尋ねるとナギはこう答えた。
「はなよめ。」
その単語を口にすると、ナギの全身から汗が噴出した。どうして泣いているのかは本人もわからない。フローリングには水溜りができた。まるで産声のような泣き声をあげた。
ナギの眼球は中空を見ている。
どこからともなく、ひとひらの桜の花びらが部屋に舞い込みナギの眼前を横切った。またくちびるは歌を唄った。今度ははっきりと。
彼女の脳が痛烈な追憶を始めたのだ。
この物語は彼女が「はなよめ」だった時代の記憶である。
場所は、小さな、暖かな島。地図に無い町。
そこには、町の規模にはそぐわない巨大な神社がある。
正午には必ずサイレンが鳴り、皆立ち止まり黙祷を捧げる。
繁華街がある。小さな遊園地や劇場もある。
漁業も農業も無い。産業がないのに娯楽だけがある。
そう。この町の特産品こそ「はなよめ」。
特権階級の人間のために教育された「はなよめ」は秘密裏に売買され、この町を出て行く。そして誰一人として二度と戻ることはない。
彼女が町に生きたかつての日常。
それはまるで幻想のようだった。
町は歌にあふれ、下駄の音がそこかしこに乱れる。
人々は夜を愛し、朝を憎んだ。
夕闇に輝きだすわたしたちの生命活動。
橙色の提灯が、わたしたちの裸足をお社に導くの。
赤いりんご飴を齧りながら、わたしたちは少女でなくなったの。
死に物狂いで逃げた時、前を走るあなたのお香に汗と血の匂いが混じっていたの。
「わすれないでね」
みんなそう言って、いなくなってしまったの
なのにわたしは忘れてしまう。
田んぼは水が張られてキラキラのあぜみち。誰もいない道にオルガンが置かれている。季節の風が吹くたびにオルガンは勝手に鳴るから。
おもいだしてね。わたしを。うたうあなたのこえは。だいすき。
あまりにも優しく
あまりも残酷な少女達の脱出劇。
―「鉄とリボン」
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