1st debut album『素粒子たち』リリース記念 メンバーインタビュー

2020年5月28日、三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONにて小野雄大『素粒子たち』のリリース記念配信ライブが行われた。新型コロナウイルスの流行により外出自粛が続いた中で、5人が音を合わせたのは実に約3か月ぶりのこと。ため込んだ熱を放出するかのように約1時間のライブを完走したメンバーに、今回のアルバムリリースについて話を聞いた。

ポップス、ジャズ、ブルース…それぞれが異なるルーツを持つ5人が、どのようにして集い、ともに音楽を作るに至ったのか。その始まりの物語と、これからの話。


ーまずは、今回全曲プロデュースを行った丈造君と小野雄大の出会いについて教えてください。

山田 初めて会ったのは2017年6月、三軒茶屋の「四軒茶屋 yoncha」っていうライブバー。確か、周年イベントだったよね?

小野 そうそう。俺は「うたたね」のデュオセットで出た。 

山田 俺は古館賢治&斎藤桃子夫妻によるデュオユニット「bluffer」に参加させてもらってたんだけど、終わった後に雄大君が「めちゃくちゃよかったわ」って話しかけてくれた。 

小野 実はもともと、学芸大学メイプルハウスの店長に「山田丈造っていうトランぺッターがいて、いつか会わせたいんだ」って言われてたんだけど、たまたまメイプルよりyonchaで先に出会っちゃった(笑)

山田 それで、メイプルの店長が「もう会ったなら、とりあえず2人でやってみようよ」って言ってくれて、初めて2人で演奏したのが2017年8月。店長の誕生日企画で『公開リハーサル』っていう名目で、お客さんは3人くらい。雄大君は当時自分の曲のキーとかもわかってなくて、とりあえず最初のコードだけ教えてもらってあとは聴きながら。”栞”とか”あざらし”とかやったよね。

小野 当時は譜面も書けなかったから、俺はほんとに弾いてるだけだったんだけど、その合間合間に吹いてくる丈造すげぇなって単純に思ったよね。その時に作って持って行ったのが”ささいな(#10)”っていう曲。丈造にトランペット吹いてもらったらいいだろうなーって思いながら作った。その後も何回か一緒にライブやらせてもらったり、丈造のバンドのライブを見る機会はあったんだけど、そんなに頻繁に会ってたわけではなかったかな。

 

ープロデュースすることになったきっかけは?

山田 初めて聴いたときから、雄大君はひとりで勝手に大きくなっていくんだろうなって漠然と思ってたんだけど、改めて一緒にやった時に雄大君の演奏を聴いてて、「こうやったら雄大君の良さがもっと出せそうだな」って思って。それで俺の心に火がついた。アレンジもするし、メンバーも集めるから、やらせてくれと。”小野雄大”っていう歌をもっと「どかん!」とやりたいし、何より俺が一緒にやりたいって。ちょうど雄大君も、仕事辞めて音楽でやっていきたいっていうタイミングだったから、「じゃあ一度打ち合わせもかねて飲もう」って約束して、そこに上京して間もなかった碓井も呼んだ。それが2019年の9月くらいかな。 

小野 maziwaris(山田・碓井が所属するバンド)のライブは見てたから碓井のことは知ってたんだけどしっかり話したことはなかったから、この時に初めて碓井とちゃんと話したよね。 

碓井 そうだったね。この時はまだ、雄大君の音楽をちゃんと聴いてたわけではなくて、楽しい飲み会って感じ。最初に一緒に音を出したのは、初めて3人でスタジオに入った時、中野のRinky Dink 。雄大君が譜面書いてきてくれたんだけど、出てくる曲がどの曲も全部ほんとによくて。「なにこれー!」ってすっごいテンション上がった(笑) 

小野 この時には丈造が、もう頭の中にイメージは出来てきてるからメンバー集めさせてくれって言ってくれて。それで、連れてきてくれたのが大輝だった。

三嶋 俺は、初めて雄大君の歌を聴いたときに「すげぇなこいつ」って思ったの。自分が音楽で食っていこうって決めてから初めてくらいの感覚で。これはちょっと、いくんじゃねぇかなって思って、音楽をやる人間としてこれにかめるのラッキーだなって思った(笑)そもそも俺は丈造君をめっちゃリスペクトしてて。ジャズの現場でも超大御所みたいな人たちと肩を並べて演奏して、常に厳しい現場に立ち続けてるやつが、「ほんとにいいから」って選んで来た人だから間違いないだろうなって思ってたんだけど、聴いてみたら俺の想像を越えてきて「まじでいいじゃん」ってなって。そして今もなお、聴く曲聴く曲に感動する。なんでこいつが売れねぇんだ?って思ってる(笑)俺の周りの人たちにも聴いてもらったりしてるんだけど、みんな「いい」って言ってくれてる。何より、アラサーに響くっていうね。 

山田 アラサーっていうか、平成初期生まれ、俺ら同世代に響く歌だよね。正直、今の高校生とかには響く歌じゃないかもしれない。ただほんとにずっしりくる。 

三嶋 ほんとそう。俺だってまだまだペーペーだけど、30歳にもなればそれなりに色々経験してるじゃない。それを全部、かっこつけてるわけでもなく自然な感じで歌ってるんだよね。かつメロディーもめっちゃいい。そういうアーティストってなかなかいない。だからこそ自分ができることはやろうって思うし、そう思わせてくれる人だから、ありがたいよね。 

小野 大輝は、歌詞の世界観とかにも解釈を深めてきてくれるから、俺も手抜けないなって思う(笑) 

丈造 そんな感じでベースは大輝君ですぐ決まったんだけど、ドラムをずっと悩んでて。タイヘイがすごいドラマーだっていうのは知ってるし、バンドとしてばっちりだっていうのもわかってたんだけど、僕ら北海道時代から10年来の付き合いでずぶずぶになりすぎるから。だけどやっぱり、リハに入れば入るほど「タイヘイしかいない」って思うようになってきて。それで、タイヘイに相談したら「全然やるよ」って言ってくれたんだよね。それでようやく5人になった。俺はそもそもポップスにあまり明るくなかったから、そのジャンルの経験が豊富なタイヘイが加わってくれたことで急激にバンドができて行った感じがしたな。タイヘイが初めて入ったスタジオで、サウンドが全部バキバキって決まっていった。 

小野 ”ひかりのなかへ(#1)”とか、まさに。この曲は、タイヘイが入る前に「やるんだったらこういう感じ」って思いながら作った曲で。このメンバーで最初に作った曲だったから、アルバムでも1曲目に入れようってなったんだよね。こんな感じで始まって、2019年12月に三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONでタイヘイ以外の4人で初めてライブをやって、その年明けの2020年1月7日に渋谷のJazz Bar琥珀で5人でライブをして。3か月少しずつ、確実に進んでいった。 


ー今回のアルバム『素粒子たち』について聞かせてください。 

山田 バンドをやるうえで碓井にどうしてもリフを作ってもらいたくて。ギターのリフはギタリストが作るのが一番かっこいいと思うから、いいのができるまでずっとスタジオにこもって作り続けた。

碓井 そうだね。 

小野 レコーディングそのものは2日間だったけど、サウンドイメージ作りにめっちゃ時間かけたよね。 

山田 詩と主線はいじらないけど、サウンド面では、メンバーそれぞれの武器が一番映えるような形で作りたくて。キメるけどキメすぎない。そこはすごくエゴを出させてもらった。いざリリースってときに出鼻くじかれたけどね、コロナに(笑)

タイヘイ でも動きが前向きだったよね。 

山田 ”エブリシング”のMVも結果的にすごくいいものになったしね。 

小野 確かにあの時の動きは早かったね。

山田 ZOOMでMVを作るって言われたとき、おれは正直「どうなの?」って思ったの。「そんなに焦って出す必要ある?」って。でも、出来上がったのが本当に素晴らしいMVで。俺らがひたすら部屋でふざけてるだけの動画がこうなるんだってほんとに感動した。

小野 みんなも前向きだったから、自分も進まなきゃっていう気持ちがあったかなぁ。

三嶋 「Stay Home」すべったのが悔やまれるけどね。

一同 (笑)


山田 そういえば今更だけど、なんで『素粒子たち』なの? 

小野 「目に見えないけど、実は近くにあるもの」っていうのが自分の中で大きなテーマであったんだよね。生きてる中で、わかってるつもりになってるけど実はよくわかってないものとか。アルバムのジャケットには北林加奈子さんの作品を使わせてもらったんだけど、普段見えてないけど多分その辺にいる”妖怪”的なものを表現してる方で、今回のアルバムにぴったりだなと思ってお願いした。 

山田 雄大君はそういうことをあまり多く語りすぎない人だよね。俺も突っ込んで聞かないし。「”nylon”って何?」とか(笑)

三嶋 俺は結構突っ込むけどね。

タイヘイ 確かに突っ込んでるね。ファンだからね。

三嶋 そう。

山田 キャラが出るよね(笑)

三嶋 知らないものを知らないままでやるのが失礼だ、って思うタイプの人間だから。 

小野 突っ込んでくれるっていうことは興味を持ってくれてるってことだから、単純に嬉しいよね。作りがいがあるし。 

山田 俺らもう30歳だから、はっきりいって時間がないんだよね。10年前に出会ってたらなって思うところもあるけど、逆に今出会ったからできる音を作れてる。俺も「なんで売れないんだ」って思うこともあるけど、でも”消費されるべき音楽”じゃないと思うんだよね。今日本で売れてる音楽って、減っていくんですよ。でも今僕らがやってる音楽は、減ってかないから。だからいいかなって。SNSとかで「小野雄大」って書いてる投稿をとりあえず拡散しまくる、とかはやらない。でもその代わり、しっかりと音楽を聴いて応援してくれる人をじんわりと増やしていきたいなって。

小野 俺は今のタイミングで出会えてよかったなって思うよ。ソロでずっとやってきてたのを知ってる人とかは、こうやってみんなが集まってくれたことで急激に音が広がっていく感覚を感じてくれてると思う。

山田 くどいんだよ、小野雄大サウンドって。いい意味でね。 

小野 ちょっとドキッとするじゃん(笑) 

山田 ずしっとくるの。だから、くどいのが刺さる人にはすごい刺さるって思ってる。 

タイヘイ 雄大君は、肩幅が広いよね。

小野 水泳やってたからね。

山田 小野雄大は”鳴る”んだよね、体が。楽器としてすごく鳴ってるって感じ。 

タイヘイ 感じてるよ、「鳴り度」みたいなの。今日のライブは8くらい。

小野 高いの?

タイヘイ 高い。たまに行きすぎっちゃってる感じもまた好きだよ。 


ーこれからの活動のイメージはありますか?

山田 バンドが始まってたった半年だし、出会った時のことを振り返るのももちろんいいけど、今は早く次のことをやりたいなって。 

小野 できればすぐに次の作品を作りたいんだよね。実はもう、アルバム分そろってて… 

三嶋 すっごいね。まじで? 

小野 あとは、家から出てみんなに聴いてもらえるようにデモが録れれば。

山田 やっぱり、予想を裏切り続けていきたいよね。音で裏切り続けていかないと、ずっと一緒にできないから。みんなもういい歳だから、そのスパンが短くなっていくと思うの。だから、「うわ、雄大君こんな曲書いてきたの?」「大輝、こんなわけわかんないベース弾いちゃうの?」「碓井、何その音!」みたいなのがこれからもっと交わされることになっていくだろうから、純粋に楽しみ。 

小野 俺も、まずはメンバーの期待を裏切りたいなっていうのがあるし、今回この『素粒子たち』を聴いてくれた人たちが、次も驚いてくれるような作品を作っていきたいなって思ってます。

MEMBER

小野雄大(Vocal,Acoustic Guitar)  @ydon79

アコギを手に歌う、シンガーソングライター。アコースティックバンド『うたたね』のフロントマンとしても活動。

山田丈造(Trumpet,Flugelhorn) @0390ozekat
ジャズをルーツとしつつ、様々なジャンルのアーティストとコラボレーションを重ねる気鋭のトランペット奏者。 

三嶋大輝(Wood Bass,Electric Bass)

東京都内のジャズクラブ・ライブハウスを中心に演奏活動を行うジャズベーシスト。 

碓井佑治(Electric Guitar)@john_yuji 

ブルースをルーツに持つギタリスト。北海道発のバンド『maziwaris』のギターとしても活動している(山田丈造も同バンドに参加)。

タイヘイ(Drums,Percussion) @wakachikorecord
Shunske G & The Peas(山田丈造も同じく)の活動と並行しながら、showmoreをはじめ多くのバンドをサポートしているドラマー。    


聞き手|馬場聡美


2020年6月17日(水) 小野雄大 1st debut album『素粒子たち』ON SALE

※店舗購入特典あり
TOWER RECORDS|”nylon"弾き語り譜面
ヴィレッジヴァンガード特典|ポストカード


◆ライブ情報

”素粒子たち”リリース記念LIVE&TALK
6/21(日) @渋谷Jazz bar琥珀-amber-(渋谷LOFTとなり) 詳細

”素粒子たち”ツアー
7/30(木) @大阪slowbird 詳細
7/31(金) @奈良ネバーランド 詳細
8/1(土) @名古屋ブラジルコーヒー 詳細

※全日程バンド編成

小野雄大公式ホームページ

シンガーソングライター小野雄大の公式ホームページ。

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